ビジットトカチパスでめぐる冬の十勝ひとり旅 温泉街から旧士幌線のアーチ橋を歩いてみた

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今日は12月28日。十勝ひとり旅2日目の朝。

今朝の糠平はひどく冷え込んだ。外の気温は-19℃を下回っていた。

朝風呂へ向かおうとして扉を開けると、ドアノブに袋が。

そういえばチェックインの時、
翌朝に牛乳配達があるって言われていたことを忘れていた。

低温殺菌のノンホモ牛乳は、クリームのような味わい。

イメージしている牛乳の味とはまるで違う。

牛乳を味わってから、お風呂へ向かう。

廊下の暖房はフルパワーで稼働してたけど、
温度計は9℃になってて、窓ガラスも凍ってた。

露天風呂へ行ってみた。

ひとり入っている人がいたけど、引き返すにも寒すぎるので、お邪魔させてもらった。

湯けむりがたちまち凍って、脱衣所の針金は蔵王の樹氷みたいになってた。

露天風呂に入っていても耳がかじかんで、髪の毛はハードジェルで固めたみたいに。

静かな森に包まれた露天風呂には、鳥の声と温泉が流れる音だけが繰り返し流れていた。

8時過ぎに朝食会場へ向かった。

席は昨日の夕食と同じ席に座るよう案内される。

相変わらず、従業員の方々の優しい対応が心地よい。

十勝産や北海道産の食材にこだわって、丁寧に作られた朝食メニューの数々。

華美なものではないけれど、十勝は本当に食材の宝庫だなって思う。

地元の小麦を使った全粒粉のパンを直火で炙って食べたのも美味しかった。

すっかりお腹が満たされたところで、ロビーで休憩。

もうバスの時間まで1時間半ぐらいしかない。せめてあと1泊はしたいな。

チリチリと音がする火鉢と、そばの実の対流をボーっと眺めてた。

少し外を散歩したかったので、9時半すぎにチェックアウト。

古い建物の良さを生かしつつ、現代の心地よさもしっかりと取り入れて、
こんなにアクセスが悪くても、また来たいって思わせてくれる。

単純に癒されたのはもちろんだけど、
将来はこういう丁寧な暮らしをしたいなって思った。

今回宿泊した「ぬかびら源泉郷 中村屋」のホームページはこちら
新和室103の宿泊料金は1泊2食付きで15,500円。

宿の外観。

温泉街を車で通りかかっただけでは、営業しているのかも微妙に感じるほどだろう。

温泉街からネイチャートレイルを通り、糠平湖畔の近くまで歩いてみることにした。

中村屋のフロントで確認したところ、今年は雪が少ないので行けるかもとのこと。
もし埋もれるほど雪があるようなら引き返せばいいし、行ってみよう。

バス停のすぐそばにある、温泉公園の中を通っていく。

水たまりでフロストフラワーを見つけた。

フロストフラワーは水面から蒸発した水蒸気が凍って起きる現象で、
-15℃以下で風がない日しか見ることができない。

息を吹きかけるだけで消えてしまうなんて、なんて繊細なんだろう。

公園のあちこちから湯気が立ち昇っていた。

公園の裏手からネイチャートレイルが始まる。

森の中へ向かう下り坂は、ひとりだと少し心細い感じもしたが、足跡を信じて進んでみた。

国道273号線へ向かう道との分岐点。

国道を通る車の音がすると、人の気配に少しホッとする。

分岐点に架かっていた橋。

温泉が流れ込む場所には、霧氷ができていた。

その川に沿ってネイチャートレイルの道は続いていく。

少し登り坂。

ネイチャートレイルの中間あたりまでやってきた。

地図の下の方にある温泉街からは、ここまでだいたい10分ぐらい。

坂を登りきると、突然ガサッと音がした。

びっくりして音がした方向を見ると、エゾシカがいた。

この辺りに住むエゾシカ一家のようだ。

特に遠くに逃げることもなく、一定の距離を取ると、また草を食べ始めていた。

再び下り坂。今度は階段だ。

足を踏み外さないよう、ゆっくりと降りていく。

右側からも川が流れ込んできた。

東大雪の道は右方向を示しているが、その先は川だ。

川には橋がなかった。

足を踏み外さないよう、ロープに捕まってゆっくり川を渡る。

この川には温泉が流れ込んでいるようだ。

川を渡り終えてから上の方を見上げると、湯気が立ち昇っていた。

川を渡ると、まもなく糠平川橋梁に到着した。

橋梁の向こう側には糠平湖が広がる。

手前の水面に、フロストフラワーが大量に咲いているのが見えた。

糠平川橋梁は、旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群のひとつ。

温泉街から徒歩で行くことのできる貴重な鉄道遺構だ。

士幌線は帯広からこの糠平を通り、この先の十勝三股駅まで運行されていた。

将来的には石北本線の上川駅まで延伸する予定だったというが、
1978年には糠平~十勝三股間の列車運転が休止され、1987年に全線が廃止となった。

こんな自然豊かな場所を列車が走っていたというのはにわかに信じがたいが、
それだけ当時の沿線が人々で賑わっていたということの表れであり、
そして一度人が住まなくなった土地は、再び深い森に包まれていくということに、
自然の圧倒的なパワーのようなものを感じた。

糠平川橋梁の上へやってきた。

1955年完成で、1978年に運行休止になったということは、
この橋を列車が通ったのはわずか23年間ということになる。

橋梁の上を歩いてみた。さっきより糠平湖が遠くまで見えた。

立入禁止のトンネル。

湖と反対側を見ると、川の向こうに大雪山の山並みが見えた。

トンネルの掘削技術も発達していない時代に、
あの山を鉄道で超えるというのは途方もない計画のように感じた。

廃線跡に沿って、温泉街まで遊歩道が延びている。

まだ気温は-10℃以下だが、日差しがかなり暖かく感じた。

階段を登るとネイチャートレイルの道は終了。

写真を撮ったり、橋梁から景色を眺めたりして、
だいたいの所要時間は40分ぐらいだった。

階段を登りきると「ひがし大雪自然館」の前に出る。

ここは東大雪地域の自然や歴史について、色々と学べる施設のようだ。

近くには冬季休館の鉄道資料館もあるので、季節を変えてこの辺りはじっくり見学してみたい。

大雪山系の山並み。この日は雲一つなく見ることができた。

ひがし大雪自然館のすぐそばにあるのが、十勝バスの「ぬかびら営業所」バス停。

ここからバスに乗っても良かったけど、少し時間があったので、
来るときにバスを降り立った「ぬかびら温泉公園前」まで歩いた。

10時11分発「十勝バス本社ゆき」のバスに乗車した。

ぬかびら源泉郷の各バス停から乗車したのはぜんぶで5人。
往路よりも少しだけ乗客が多くてホッとする。

58km先の帯広市街地へ向かって、路線バスは出発した。

コメント

  1. もりやん より:

    さわやんさん、こんばんは。
    そして遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

    今年も旅の情報源として、活用させて頂ければと思っております。
    そして僕からも、ささやかながらこれまでに得た旅の情報を、さわやんさんに提供していければ幸いです。

    さて、先般のコメでお伝えした今春廃止予定になっている駅巡りは、予定を全て無事完遂出来ました。
    先月30日の大沼周辺は、最高の徒歩テツ日和で、トラブルもなく贅沢な時間を過ごすことが出来ました。

    帰りも料金の安い大晦日の便を取っていたので、結果的に年明けの大雪による交通トラブルに巻き込まれずに済みました。
    さわやんさんはトラブルに巻き込まれたとのことですが、すかさず陸路に切り替えて、難なくやり過ごすあたりは流石と言う他ありません。
    僕も以前帰省ラッシュ時に新青森から東京までの新幹線指定席が取れず、やむなく立ち席特急券で東京までデッキに立ちっぱだった経験がありますが、なるほど、盛岡で下車して盛岡始発の自由席を待てばいいというのは盲点でした。
    旅の実戦的情報として、記憶に留めておこうと思います。

    • さわやん より:

      もりやんさん、あけましておめでとうございます。
      そしてあけましておめでとうございます。

      今年も昨年以上に旅の情報を発信して行ければと思ってます。
      もりやんさんからはこういう考え方があるのかー!という気付きを多く頂いているので
      今年も私とは別の視点での見方を教えて頂けるとすごく嬉しいです。

      北海道の廃止予定駅めぐり、無事に完遂できたようで何よりです。
      私も30日は札幌にいましたが、もりやんさんの徒歩旅はちょうど良い日和になったなぁと
      影ながら思っておりました。今回は歌内駅以外は全て訪れたのでしょうか?

      元日の件、なんでご存じなのかな…と思っていたら、Twitterを見て下さってたんですね!
      あの日は飛行機が欠航になってしまい大変でしたが、
      すかさず陸路に切り替えたことで無事に全区間を指定席で帰ってくることができました。
      大きな出費にはなりましたが、新千歳空港の混乱ぶりを見る限り、陸路にして良かったです。
      あと、新青森~大宮の指定席はひたすらCyberstationをリロードしまくって取りました(笑)

      立席特急券の件は本当に分かりにくいシステムですよね。
      盛岡から自由席で座っていくためには盛岡以北と以南で特急券を分けて買う必要がありそうですが
      どうしても座りたいという場合には知っておくだけで心の余裕ができるかなと思います。

  2. 匿名 より:

    さわやんさん、こんばんは。

    僕が大沼周辺を徘徊中に、札幌で僕のことを気にかけてくれている人がいたとは、今思い返すとちょっと嬉しいですね(笑)
    僕は30日に駅巡りをした後、当日中に海線を乗り継いで20時ごろに札幌入りして「ネストホテル札幌大通」にチェックインしました。
    ということは、またさわやんさんと札幌ニアミスしてましたかね?(笑)

    はい、今回は今春廃止予定になっている全7駅の内、函館本線の5駅を廻りました。
    残りの2駅、宗谷本線の歌内と根室本線の糸魚沢は、過去に訪れているので今回は省きました。
    というのも、JRの廃止発表を受けてからの探訪だと、雪深い時期に限定されてしまうので、普段から廃止になりそうな北海道の駅をピックアップして、雪のない時期に怪しく嗅ぎまわっていますw
    それと公式発表後だとどうしても現場で同業者とかち合ってしまうので、それを回避したい思惑もありますね。

  3. もりやん より:

    ぐは、名前の入力を忘れました。
    上のマヌケな匿名コメントは、私「もりやん」でした。
    大変失礼しました(笑)

    • さわやん より:

      もりやんさん、おはようございます。
      匿名の方からの投稿だったので、最初は批判or訂正のコメントかなと思ってましたが
      内容を読んでみてすぐにもりやんさんだと分かりましたよ(笑)

      30日は私も夕方に桑園の北のたまゆらに行ったあと、
      エスタ札幌の地下食品街をウロウロしていましたので、確実にニアミスしてますね。

      なるほどもう歌内と糸井沢は訪問済みでしたか!
      あれだけ廃止候補になってもおかしくない駅が多い中で
      ピックアップして訪問していくってさすがの嗅覚ですね(笑)
      長年の勘で「次はここだな~」みたいなのがあるのでしょうか。

      宗谷本線には抜海や糠南のように、
      愛されているという理由だけでギリギリ残っている駅もあるようで
      今後の存続が気になるところです。

  4. もりやん より:

    さわやんさん、こんにちは。

    >長年の勘で「次はここだな~」みたいなのがあるのでしょうか。

    そうですね、北海道は主要駅とその近郊駅以外は全ていつ廃止になってもおかしくない状況ですが、強いて上げるなら留萌本線の全駅ですね。
    留萌~増毛間の部分廃止はまだ記憶に新しいですが、残存線区についても未だ残っているのが不思議なくらいの状況です。
    線区内には峠下駅を始めとして魅力的な駅も多く、また平坦部は駅間も比較的短くて徒歩テツ向き、そして秩父別駅近くには時間を潰すのに最適なスパ銭もあり、駅巡りをするには好条件が揃っています。
    昨今は廃「駅」発表ならまだしも、廃「線」発表になると、あとは最終日まで現場は阿鼻叫喚の地獄絵図wになることも多く、ゆっくりまったり楽しむなら今のうちがおススメです。

    • さわやん より:

      もりやんさん、おはようございます。

      確かに留萌本線は末端部だけが先行して廃止されましたけど、
      残った深川~留萌間もかなり危うい状況ですね。
      すでに路線バスの方が本数が多くて旭川直通までしてる状況ですし、
      鉄道を使うメリットがなくなってきているなと感じます。

      秩父別温泉「ちっぷ・ゆう&ゆ」かなり良さげですね!
      寒空の中を歩いた後の温泉は身体に染みそうです。

      私はもう留萌本線は何度か乗車しているので「乗り納め」に行くことはないですが
      ゆったり乗るなら今のうちというのは完全に同意です(^^ゞ

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