ぬかびら源泉郷ゆきのバスは、20名ほどの乗客を乗せて帯広駅前を出発した。

十勝川を渡ると、帯広市から音更(おとふけ)町へ。
北海道にいることを忘れるぐらい、雪が全くない!

音更町は帯広のベッドタウン。町なのに人口は4万人を超え、稚内や網走、富良野より多い。
国道沿いにはチェーン店が数多く並んでいて、
車があれば帯広にすら出る必要がないレベルだ。

音更川を渡ると、連続した市街地が終わりに近づいてきた。

ようやく十勝らしい風景になってきた。
バス停の名前も「音更7号」「音更8号」「音更9号」と、数字だけが淡々と増えていく。

車窓からスケート場が見えた。
この辺りはスキーじゃなくてスケートなんだね。

士幌町に入ると、士幌○号がまた延々と続いていく。
士幌25号のバス停からは地元の学生が乗り込んできた。
音更町内での下車はほとんどなく、乗客数は意外と減っていない。

士幌町の中心部へ。

士幌待合所で7、8人が下車。
帯広駅を出て約1時間。ようやくバスの中が少し空いたという感じだ。

バスはいよいよぬかびら源泉郷がある上士幌町へと入ってくる。
誰も車窓なんて見てないけど、車窓はとっても素晴らしい。

バスの車内はこんな感じ。
前方座席まで全部2名がけのシートが並んでいるから、
結構たくさんの人が座れるようになってる。

大きな山がけっこう近くまで迫ってきた。雪も少しずつ増えてきたね。

上士幌町の中心部までやってきた。
ぬかびら源泉郷まではあと22kmっていう看板が見えた。

上士幌の交通ターミナルに到着した。

ここで自分以外の全員が降りてしまった。

日中の時間帯にぬかびら源泉郷に行くのはこの1本だけなのに、
そこに路線バスで行く人が誰もいないなんて寂しすぎる。

バスは上士幌の街をぐるっと一周して、拓殖バスの営業所も通る。
ぬかびら源泉郷まで行くのは十勝バスだけだけど、上士幌までは2社で運行してるみたい。

上士幌の市街地で2名が新たに乗り込んできた。どこかの温泉宿の従業員さんなのかな。
貸切じゃなくなったことにホッとしつつ、バスはいよいよ本格的に山の中へ。

旧国鉄士幌線の線路跡がまだあちこちに残されていた。
橋が途中で崩壊してしまっているのが、なんとも物悲しい。


糠平ダム。

糠平湖。
ガードレールのすぐ向こうには、結氷した湖面が広がっているのだが、
湖面が鏡のように反射していて、写真だと湖があるように見えない。

鉄道博物館の案内が見えてきた。冬季休館なのが悔やまれる。

続いて「ぬかびら源泉郷」の案内も見えてきた。

ぬかびら源泉郷のバス停は「十勝バスぬかびら営業所」、「ぬかびら温泉公園前」、
そして終点の「ぬかびらスキー場前」の全部で3つ。
今日宿泊する中村屋は「ぬかびら温泉公園前」が最寄りなので、ここで下車した。
雪は思っていた以上に少なく、10cmほど。
気温が極端に低いためか、足を降ろすと気持ち良いぐらいキュッキュと音が鳴った。

今日のお宿「中村屋」。
泊まるのは7年ぶりで、2回目の訪問。

チェックインの手続きをして、早速お部屋へ向かう。
ここのお宿は古い建物を日々リノベーションして営業しているので、
廊下はまだ昔ながらの鄙びた温泉宿の雰囲気が残る。
今回もどんな変化があるか楽しみだ。

喫煙者にも配慮した素敵な喫煙所。

中村屋の部屋は、そのひとつひとつが個性的。
今回の部屋は2007年に完成した「新和室103」。
7年前も同じ部屋に泊まった。

窓が大きく取られた新和室 103。

照明は昔のガラス瓶を加工して使ってるんだそう。

窓際のフローリングスペース。ここがすごいお気に入り。

木をくりぬいて作った手作りの洗面台。
糠平湖のアイスバブルの写真が飾ってあった。

オンコの枝はドライヤーとタオル掛けに。

せっけんも2種類あって、いろいろこだわって作ってるみたい。

もともと床の間だった場所にはちょっとした仕掛け。

開けるとテレビが登場。見ないときは隠しておけるのがいいね。

ちょっと館内散策へ出かけてみた。
果実酒&果実酢コーナー。夕食時にいただけるらしい。

「エゾリスの穴」という部屋。

宿泊者はここから好きなものを借りることができる。
ホテルに泊まると、ちょっとしたものは貸し出してくれるけど、
中村屋ほど貸出品が多い宿は聞いたことがない。

双眼鏡とか、図鑑とか、アロマディフューザーとか、老眼鏡とか。

除光液とかデンタルフロスとかハンドクリームとか。
これでもかっていうぐらい揃ってて、見てるだけで感心してしまう。

フロントとロビー。
アンティークソファが並び、落ち着いた音が流れている。

お土産物コーナー。

熊の置物や木刀、温泉まんじゅうは置いていない。

並んでいるのは、地元である上士幌をはじめ、十勝地方で作られたものばかりだ。

火鉢の上では、韃靼(だったん)そば茶の実がぐるぐると対流していた。
ボーっとした時間を過ごす贅沢な時間。

本もたくさん置いてある。1泊ではとても時間が足りなくて勿体ない感じがした。

ぬかびら源泉郷周辺の写真集。
また別の季節に訪れてみたくなった。

大浴場は木のお風呂とタイルのお風呂。
21時で入れ替わるので両方入れる。

新和室103と同じ2007年に完成した露天風呂。



18時から夕食会場へ向かった。

廊下に貼ってあった、食材の生産者の方々。みーんな十勝産なんだね。

山小屋みたいな素敵な雰囲気のレストラン。
ひとりぼっちのおじさんでも、本当に温かく迎えてくれて、
ちょっとドキドキした気持ちがほどけていく。

本日のお品書きはこちら。

本日の夕食メニューの数々。
温かい食べ物は後から順番に出してもらえた。
十勝の食材を一つ一つ丁寧に食べているという実感が嬉しかった。
どれも本当に美味しくて、食べ終わるのが惜しいぐらい幸せな時間だった。

すっかり満たされて、おやすみ前のまったりタイム。
振り子時計のカチコチという音がやたら心地よい。
韃靼そば茶を何杯飲んだだろう。

この日のぬかびら源泉郷はひどく冷え込んだ。
でもその分、露天風呂から見た満天の星空はいっそう輝いて見えた。
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