
相倉口までのわずか15分ほどの道中だが、
最前方の席が空いていたので、こちらに座らせてもらう。
バスにははじめ4人しか乗っていなかったが、
途中の「下梨」バス停からは学生10人ほどが一気に乗車してきた。
「世界遺産バス」と名前こそ付いてはいるものの、
この辺りに住む人たちにとっては立派な生活路線であることを思い知らされる。
「お願いします!」と生徒全員が運転手さんに次々に挨拶をして乗り込んでくる。
それを見て、おじさんはとっても微笑ましい気持ちになったのであった。

12時30分、相倉口(あいのくらぐち)のバス停に到着した。
菅沼からの後戻りとなるため、運賃570円を支払って下車した。
相倉集落は菅沼より規模が大きく、五箇山を象徴する合掌造り集落だ。
バス停もかなり本格的な茅葺き屋根となっており、力の入れ用が読み取れる。
世界遺産バスは地元の学生をたくさん乗せて、
南砺市の市街地へと走り去っていった。

バス停の名前が相倉「口」というだけあって、
バス停から相倉の集落までは400mほどの距離がある。
今日は青空が見えているので何ともないが、
雪が降りしきる日にこの道を一人で歩くのはかなり心細いだろうな。

5分ほど歩くと、相倉の駐車場が見えてきた。
徒歩の場合は特に入場料金はかからないため、
駐車場係のおじちゃんと「こんにちは~」「いらっしゃいませ~」と
軽い挨拶だけを交わして敷地内へと入っていく。

駐車場の入口にあったお食事処。
傘をかぶった雪だるまが可愛らしいね。

まずは集落全体を眺められる展望台へ行ってみることにした。
駐車場の脇に「展望所写真スポット入口」の案内が出ており、
雪の多い時期でも、展望台へ行くことはできるようだ。

今回は借りなかったけど、長靴の貸し出しもあるので、
雪道非対応の靴を履いてきちゃっても、とりあえず安心。

ここから雪の坂道を登っていく。
徒歩5分とあるので、意外と楽に行けそうだ。

上から戻ってくる人たちが見えた。
ん??こりゃ、結構距離ありそうだぞ??

一応、遭難しないように看板が1分おきに登場してくるんだけど、
ここから3分で着きそうな感じがしない。。。

まだ展望スポットには着いてないけど、ここらが中間地点。
「ここがそうですよ」と言われたら納得するぐらいの美しさだ。
特に、背後にそびえ立つ人形山の山容は心を奪われた。

本当の展望スポットはさらに先のようだ。
胸の辺りまで降り積もった、真っ白な雪の壁に沿って進んでいく。

除雪された道が突然終わりを迎えた。どうやらここが終着点のようだ。
時計を見ると、駐車場から要した時間は、確かに案内板の通り5分だった。

その展望スポットからの眺めがこちら。
雄大な人形山と、雪化粧した合掌造りの町並み。その対比が素晴らしい。
相倉合掌造り集落には現在24棟の茅葺き屋根の建物があり、
そのうち11棟は、そこで実際に人々が生活を送っているのだという。
単に古い建物を保存・展示しているだけではなく、
ここで暮らしている人々がいるからこそ、心惹かれるものがあるのだろう。

誰かが残していった可愛らしい雪だるまがあったので、
ちょっとだけ拝借させてもらった。
展望スポットから下まで降りてきた。
最初は滑らないようにと慎重に歩いていたのだが、
意外と滑らないことに気付き、
帰りはトレイルランニングのように走って下山(笑)。
歩いてきた道を振り返ってみると、
自分がさっきまでいた展望スポットが確認できた(赤矢印)。
これから上っていく人たちの姿も確認できる(黄矢印)。

展望台を降りてきて、いよいよ相倉合掌造り集落を歩いてみる。
築100年を超える茅葺き屋根の家が点々と存在していて、
こちらも菅沼同様にタイムスリップしたような風景だ。
中央の道はきれいに除雪がされていて、かなり歩きやすかった。
事前に新高岡駅の観光案内所で入手していた、
相倉合掌造り集落のパンフレットを頼りに、少し脇道へ反れてみる。
しかし、この時期は雪が多すぎて、道は繋がっていなかった。

こちらは、相倉伝統産業館。
普段、人が暮らしていない場所は除雪が入っていないため、
まさに玄関が埋もれているという状況。
「本日休館」。
いや、そうでしょうね・・・。
これで開館してたら、ある意味入ってみたいけど(笑)。

今日は朝5時過ぎに朝食を食べて以来、まだ白玉ぜんざいしか口にしていない。
雪の中をたくさん歩いて、めちゃくちゃ腹が減った!
さっきバスの車内で、たらふく食べれそうな店をピックアップしておいたのだ。
それが合掌造り集落の中にある「茶店 まつや」。

こちらがメニューの数々。
籠に盛られた野菜の天ぷらに私は心惹かれた。

いざ、お店の中へ。
ちょうどお昼時ということもあり、
自分が入った時には4組ほどが食事をしていた。
多くの席が窓際に面していて、
店内からも合掌造りの町並みを見ることができた。
(写真は退店時に撮影したもの)

入口から一番奥の席に座らせてもらった。
「そんなに奥まで行かなくてもいいんですよー」と、
気さくな店員さんが申し訳なさそうにしていたが、
個人的には一番奥が好きなのだ。お店の全体の雰囲気も見れるし。
店内は食事処と土産物店を兼ねていて、
奥の方には民芸品などがたくさん売られている様子だった。

注文したのは「まつや定食」(2,500円)。
山菜そば、天ぷら、五箇山豆腐、郷土料理、おにぎりなど、
数多くの品目が並ぶ、このお店で一番豪華なメニューだ。
こんなにご馳走が並ぶと、まるで地元に帰省して、
ばーちゃんの家に遊びに行ったような感覚になった。

このお店で特に人気が高いという野菜天ぷら。
五箇山名物の固い豆腐「五箇山豆腐」の天ぷらを始め、
キノコや山菜、カボチャなど地元で採れた野菜が籠いっぱいに並ぶ。
全体的に相当なボリュームがあったものの最終的には全て完食。
五箇山の食を結集させたような定食で、非常に満足度の高い昼食であった。
「まつや」さんの位置はこちら。

相倉では2時間ほどの滞在時間があったものの、
展望台へ上ったり、集落を散策したり、食事をしたりしていると
ちょうどよい感じで時間が経過した。
駐車場係のおじちゃんと「ありがとうございました~」「どうも~」と、
また軽い挨拶を交わして、相倉口のバス停へと戻る。

「相倉口」のバス停へと戻ってきた。
今度は白川郷方面のバスに乗るので、来た時とは反対側のバス停だ。

乗車するのは14時38分発。白川郷へ向かう本日の最終便だ。
斜めにズレたテープが14時38分発の便にも掛かっていて、
一瞬運休かと焦った、、、。

相倉口バス停にあったスコップ。
スコップ付きのバス停は生まれて初めて見た!

相倉口には、ほぼ定刻通り白川郷ゆきのバスがやってきた。
白川郷へ向かう最終のバスであったが、相倉口から乗ったのは自分だけ。
バスには今回も4人の乗客が乗っていた。
五箇山から白川郷までは「飛越峡合掌ライン」という、
庄川に沿ったダイナミックな景色が続くルートを進んでいくのだが
富山県と岐阜県の県境またぎをなんと7回も繰り返す。
カーナビが思いっきりバグりそうな道だった。

白川郷や五箇山のそばを流れる庄川。
バスはひたすらこの庄川と歩調を合わせるように進んでいく。
道の駅「白川郷」の脇を通過した。
相倉口から世界遺産バスに揺られること約50分。
15時30分ちょうどに白川郷に到着した。
到着した白川郷バスターミナルがこちら。
高岡や高山方面だけでなく、
金沢や富山、名古屋へ向かうバスも発着する大きなターミナルだ。
バスターミナルからは歩いて白川郷の合掌造り集落を目指す。
五箇山と比べると、合掌造り集落の手前にすでに多くの建物があり、
街の規模という意味では全く違う印象だ。
高山市内へ向かうバスは17時半が最終便。
それまでの約2時間、白川郷の散策を楽しむとしよう。
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