いよいよ高山の街を離れる時間がやってきた。
高山駅の改札を通り、自由席の9号車の乗り場へと向かう。
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1番ホームに降りると、程なくして「特急ひだ」のキハ85が入線してきた。
まだ発車までは5分ほどあったので、思わぬ早い入線にビックリ。
どうやら、ここで後ろ4両を切り離して3両編成で富山へ向かうようだ。
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高山から先は、8~10号車のみが富山行きとして運転される。
8号車が指定席、9号車が自由席、先頭10号車がグリーン車だ。
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自由席が1両しかなかったので、座れるかどうか心配だったけど、
そんな心配はすぐに消え去った。
名古屋方面から来た客は、高山駅でそのほとんどが降りてしまい、
自由席に残った人は4人ほど。
高山駅からは自分を含めて8人ほどが乗り込んだが、
それでも前後の間隔を十分にとって座れる人数だ。
この列車で使われているキハ85系は「ワイドビュー」という愛称があるように、
座席の部分が通路より少し高くなっていて、景色がよく見えるようになっている。
床がカーペットになっていて、シートにも重厚感があった。
乗り心地が良く、思わず靴を脱いで寛ぎたくなる車内だ。
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高山駅を出発して最初の通過駅、上枝(ほずえ)。
普段、JR北海道かJR東日本のエリアばかりを旅行しているためか、
JR東海のオレンジ色の駅名標がとても新鮮に映る。
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雪景色の中を軽快に走る特急「ひだ」。
気動車特急ならではの力強いエンジン音が車内に心地よく響く。
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高山市内の中心部を流れていた宮川が再び寄り添ってきた。
この宮川は、途中から名前を神通川に変えて、
高山本線の車窓にぴったりと寄り添っていくことになる。
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高山駅で購入した乗車券と特急券がこちら。
両方を合わせた合計金額は2,890円だった。
この辺りは白川郷を経由するバスの方が需要が大きいのか、
高山駅から富山駅までのバス運賃は3,260円と、
特急「ひだ」より高い価格に設定されている。
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車窓いっぱいに広がる雪景色。
新幹線では味わえない、在来線ならではの贅沢な車窓。
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高山を出発して15分ほどで、最初の停車駅「飛騨古川」に到着。
こちらも高山同様、古い町並みが有名な街。
最近では映画「君の名は」の舞台になったことで、聖地巡礼の場にもなっているらしい。
次回はじっくり時間を取って、散策してみたいものだ。
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飛騨古川を過ぎると、両側から少しずつ山が迫ってきた。
次の停車駅は富山県の猪谷。いよいよ県境越え区間に差し掛かる。
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橋を渡り、宮川は車窓左手から右手へ移る。
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今度は再び右から左へ。高山本線はまさに橋梁パラダイスだ。
宮川が右に行ったり左に行ったり、その度に橋を渡り、
どちらの席に座っていても、飽きることがない。
※高山→富山の場合、総合的には右側の方が良かったと思う
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この先にダムがあるのか、川の流れが少し穏やかになってきた。
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坂上駅では美濃太田行きの普通列車とすれ違った。
あちらの車両は2両ともオールロングシートだった。
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坂上駅と打保(うつぼ)駅の間にある打保ダム。
そこまでの区間、宮川はゆったりとした流れで穏やかな表情を見せてくれる。
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打保ダムを過ぎると、宮川は再び進行方向の右手に。
先ほどまでの水をたっぷりと湛えた穏やかな流れとは一転、
再び渓谷沿いの風景に変わってきた。
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かなり険しい山の中を走っているように感じるけど
途中に分水嶺はなく、川はずっと列車と同じ方向、日本海へ向かって流れている。
つまり標高はどんどん下がっているということなのだ。
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高山を出て以来、標高はずっと下がっているはずなのに、
上がっているように感じてしまうのは、その雪の量だろう。
県境が近づくにつれて、どんどん雪の量が増えていく。
打保駅ではホームが雪の壁のようになっていた。
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JR東海で最後の駅、杉原駅を通過。
この駅を過ぎると、高山本線は岐阜県から富山県へと入っていく。
並走する国道360号線のスノーシェッド。
突如、見慣れない物体が車窓に現れるので、異質で不気味な存在だ。
トンネル以外の区間もシェルターで完全に覆われている辺り、
この周辺がいかに雪の多い地域であるかが分かるだろう。
到着のチャイムと共に、猪谷の街が見えてきた。
猪谷駅に到着した。
猪谷駅はJR東海とJR西日本の境界駅。
先ほどまでオレンジだった駅名標はここからブルーへ変わる。
普通列車は猪谷駅を基点として、南北に完全に分かれて運行されているが、
特急「ひだ」はそのまま富山駅まで直通するため、
乗務員だけが、JR東海からJR西日本の乗務員へと交代する。
猪谷駅はとても雪深い場所だが、駅構内は広々としていた。
2006年までは、ここから「神岡鉄道」という鉄道が分岐して、
奥飛騨温泉郷の入口、平湯温泉の近くまで延びていたという。
割と最近まで走っていたことを知って、
その時代に乗っておけばよかったと今さらながら後悔した。
ホームの積雪計は70cmほどを示していた。
後ろにある建物は、神岡鉄道が鉱山開発で賑わっていた時代に、
神岡鉱業の職員が使っていた社宅なのだそう。
今は誰も住んでいなくて、ちょっと不気味な感じすらあった。
猪谷駅を過ぎると、宮川と高原川が合流し「神通川」と名前を変える。
線路がかなり高い場所に敷かれていて、けっこうスリルがある景色だ。
その分、遠くまで見通せる車窓は水墨画のように美しく、見ていて飽きることがない。
猪谷駅を出発して程なく見えてくるのが、神通川第一ダム。
そして、その下流にあるのが「神二ダム」。
短い区間で、2つのダムが連続で見られるのは珍しく、
神通川が河口近くまで、急勾配で流れていることが分かる。
奥に見えている橋は、国登録有形文化財の「笹津橋」。
2つの橋が重なっていて、写真だと少し分かりにくいけど、
橋の下が美しいコンクリートアーチになっているのが分かる。
ここまで車窓の主役となっていた険しい山並みと宮川・神通川に別れを告げ、
列車は富山平野へと入ってきた。
高山を出発して以来の大きな市街地となり、
猪谷の次の停車駅、陸中八尾が近づく。
陸中八尾を出ると、次はいよいよ終点の富山。
車窓には水田が広がり、通過する駅にも列車を待つ学生の姿がポツポツと見えた。
久しぶりに生活感のある車窓が戻り、少しホッとする。
気がづくと、わずか30分ほどの間に、雪の量も格段に少なくなっていた。
最後に再び大きな神通川の橋を渡り、定刻通りの16時39分、
特急「ひだ11号」は富山駅のホームにゆっくりと滑りこんだ。
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新幹線開通後に富山駅を訪れるのは初めてのこと。
在来線ホームもピカピカで、かなり洗練された印象なんだけど、
富山駅のJRは新幹線と高山本線だけなので、特急「ひだ」は随分端っこに追いやられてて、
北陸本線から第3セクター化された「あいの風とやま鉄道」の方が主役。
ホームに停車しているのは、2両編成、高岡ゆきの普通列車だ。
以前は「はくたか」「サンダーバード」「しらさぎ」などの特急が、
頻繁に往来していた時代を思うと、在来線の方はだいぶ寂しくなってしまった。
在来線の改札を抜け、いったん外へ出てみた。
在来線の改札は「あいの風とやま鉄道」の管轄となっているため、JR線の案内はかなり小さい。
沿線でトラブルがあったようで、列車は一時的に運転見合わせ中。
改札前には人だかりができていた。
すっかり生まれ変わった富山駅の構内。
もう新幹線開業前の様子を全然思い出せない。。。
みぞれが降ってたけど、ちょっとだけ外の空気を味わいたくて駅の外へ。
富山と言えばやっぱりライトレール!
利用客が減少していたJR西日本の路線をLRT化し、
再び利用者数をV字回復させたという素晴らしい例だ。
最後に「きときと市場 とやマルシェ」に立ち寄っていくことにした。
「とやマルシェ」の中は、お店がめちゃくちゃ充実していた。
富山県の名物なら、ここで一通り揃ってしまいそうな感じだ。
奥には白えび丼で有名な「白えび亭」も入店していて、
時間と胃袋に余裕があれば、ここで食事をしていきたいぐらいだった。
職場にお土産を買うという文化が完全に廃れたので、
身近な友人だけに、白えびの蒲鉾や宇奈月ビールなどの土産品を買い込み、
新幹線ホームへと向かった。
ホームへ上がると、ちょうど17時07分発の「かがやき512号」が入線してきた。
「かがやき」号の停車駅は長野・大宮・上野のみ。
乗客が頻繁に入れ替わる「はくたか」号と比較すると、
こちらは停車駅が圧倒的に少なく、とても静かで快適な帰路だった。
富山駅から大宮駅までは、わずか1時間45分ほど。
思い出の写真を振り返っていると、あっという間に着いてしまった。
今回の旅は週末を利用した1泊2日という期間ではあったものの、
念願の世界遺産を見たり、貸切の雪見風呂も堪能したり、
飛騨牛をはじめ、富山・岐阜の郷土料理などの美味しいものもたくさん食べたりと、
かなり中身の濃い旅行となった。
まだまだ地方では新型コロナに対する反応が強くて、
人の数は完全には戻っているとはいえなかったけど、
引き続きこういう旅の発信を通じて、
ひとり旅に出る人が増えると良いなと思う。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!(完)
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